新型コロナウィルス感染症の拡散により、土日の自粛要請に始まり、ついに非常事態宣言が発令されました。
リーマンショックを超える不況がくるとも予測される中、従業員の不安を払拭しモチベーション維持のため、工夫する会社も現れました。
例えば首都圏にある、建設業A社(従業員20名、創業40年)では、半年前より準備を重ね今年10月1日に予定していた賃金制度(賃金規程、賞与規程、退職金規程、慶弔見舞金規程など)の改定を5月に前倒し実施することにしました。
具体的には、
⑴社長が独断でその時々でルールなく決めていた、基本給、諸手当などを整合性が取れるように規程化する。
⑵残業代や通勤費などの計算や申請方法を明確にする。
⑶その場対応であった慶弔見舞金などの種類と金額を設定する。
特に、この状況下で会社が士気を高める方策として、具体的な支給金額を提示できる、⑶慶弔見舞金規程の整備に注力しました。
ポイントとしては、
➀ 職務に貢献でき、かつ従業員自身の市場価値が高められるようにと、慶弔見舞金規程の中に資格取得支援制度を追加する。
業務上必要となる建築士・施工管理技士などの取得支援のため、合格時には、一時金(10万円~30万円)の支給や各種専門学校に通うため雇用保険から支給される助成金「教育訓練給付金」との差額を補てんする。
② 会社に貢献した従業員を称え、定着を促すため、永年勤続表彰の報奨金を10万円単位に倍増する。
➂ 子育てをしながら安心して働けるように、定額支給の家族手当を廃止し、結婚、出産、子どもの入学・卒業につき、一時金(10万円~20万円)を支給する。
その他にも天災事変による家屋の倒壊や家財の滅失に対して一時金(10万円~20万円)を支給する規程など、すべて現金支給とし、会社の現状では精一杯従業員を想う内容としました。
先日、説明会を行いました。
事前に主旨を伝えていたにも拘らず、会議室は緊張感に包まれていました。時期が時期だけに、従業員は減給等の話でもあるのかと戦々恐々としていたようです。
実際には将来を見据えた夢のある制度改革であったため、途中で笑いが出るなど和やかな雰囲気で終了しました。新賃金規程を労働基準監督署に届け出るための代表者選出に際しても、若手従業員が自ら代表を申し出るなど積極的に取り組む姿勢も見られました。
新型コロナウィルスに翻弄される状況下で、A社の試みが、従業員のモチベーションにどれだけ影響するかわかるのはこれからです。この時期だからこそ、従業員の将来を見据え、共に成長しようとする社長の姿勢は十分に伝わったと思います。
A社の施策は、一例にすぎません。各社の現状に適した取り組みを模索してはいかがでしょうか。
第一法規『Case&Advice労働保険Navi 2020年4月号』拙著・拙著コラムより転載