4月中旬時点で、新型コロナウィルス感染症の拡大防止策であるテレワーク・在宅勤務は、企業の97.8%で取り組まれています(経団連による実態調査)。
このような背景の中、飲料大手のダイドードリンコでは、9月より在宅勤務に伴う電気代や必要な備品の購入を補助するため、月額3,000円のテレワーク手当を支給することになりました。
一方で、通勤定期代の支給は廃止され、出勤時の交通費は実費精算されます。このように、各社で通勤手当の支給方法の見直しが始まっています。
通勤手当は、コロナ禍で出勤しない場合の取扱いが問題となりますが、支払いルールの取り決め方によって対応は異なります。
⑴通勤費の「実費」として支払うことが明記されている場合
⑵通勤費の「実費」として支払うことが明記され、かつ支給方法が特定されている場合
⑶交通費の「実費」とは無関係に一律で支給されている場合
⑷賃金規程などに通勤手当の支給方法が明記されていない場合
具体的な対応については、個々の事情にもよりますが次のように考えられます。
⑴については、賃金規程などで「通勤手当は、公共交通機関を利用して通勤する従業員に対し、運
賃、時間、距離等の事情に照らして会社が最も経済的かつ合理的と判断した通勤経路及び方法に
よって算出し、支給する。」などと定めている場合です。
通勤費が「実費」の趣旨であることが明確であり、1カ月間の在宅勤務により実費が発生しなけれ
ば通勤手当の支給は不要となります。
⑵についても、「実費」が発生していない場合は通勤手当の支給は不要です。
問題となるのは、週1回の出勤があるなど「実費」が発生する場合です。賃金規程などにより、会
社が実費の支払い方法として、例えば1カ月定期代を支給すると特定していると、1カ月の定
期代を支給する必要があります。
⑶は、通勤経路や費用に関係なく一律に通勤手当と称して支給しています。
そもそも通勤手当が交通費の「実費」の趣旨として支払っているものとは言えないため、在宅勤
務で全く出勤していない場合でも支給が必要です。
⑷については、これまでの会社の取扱いや当事者の認識などから、契約の意思解釈として⑴~⑶の
どれに当てはまるのか判断することになります。
通勤手当に関する支給方法の規定がなくても、他に欠勤控除に関する規定がないかを確認し、例
えば「欠勤などで通勤の実態が、1カ月間全くない場合には通勤手当を支給しない」などと規定
があれば同様の扱いとします。
いずれにしても、在宅勤務時に通勤手当の支給について労使間で揉めないためには、事前に、賃金規程の中に、「在宅勤務(在宅勤務を終日行った場合に限る。)が1カ月あたり16日以上の場合の通勤手当については、毎月定額は支給せず、実際に通勤に要する往復運賃の実費を給与支給日に支給するものとする」などと追記を検討するとよいでしょう。
第一法規『Case&Advice労働保険Navi 2020年9月号』拙著・拙著コラムより転載